しかし、1970年代に入るとその考えは一変します。
そもそもハルステッド手術が主流だった頃、乳がんはリンパ節を経由し全身に広がると考えられていました。
しかし、1970年代大々的な臨床試験が行われ、その結果、最初に癌が発生した場所から癌がリンパ液の流れに乗り離れた場所にたどり着くとした場合、 その場所に転移がなければそれより先には転移は見られないという結果が報告されました。
また、早期の乳がん患者に対して乳房を切除しても乳房を残しても(温存)その後の治療に差がないことがわかったのです。
「女性が胸を切除する」ということは肉体的にもそして特に精神的にも非常に大きなダメージです。 このような観点からも現在では乳房温存治療を主とした考えが一般的です。 乳がんの治療法には、外科療法、放射線療法、薬物療法があり、ひとつの治療法だけでなく組み合わせて行うことにより、より効果的で患者にとって負担が少ない治療を行います。
この治療法の中で外科療法と放射線療法は局所療法(治療を行う部分だけに治療をほどこす)といい、薬物療法は全身療法として位置づけられています。
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①腫瘍核手術
乳房のしこりだけを切除する手術のことで、癌から約1㎝外側を切除します。
しかし、この手術はどちらかというと診断目的で行われるもので、生検などにより診断がつかない場合に行うことが多く、癌の手術としては一般的ではありません。
②乳房部分切除術
しこりを中心にその周囲約2㎝の正常な乳腺も含めて切除します。
今の述べた①と②が乳房温存手術というこになります。
③乳房単純切除術
乳房は全て切除するが、筋肉、リンパ節は温存することをいいます。
外科手術で大切なことはもちろん癌である病変部分をとりきるということになりますが、癌は増殖し転移をします。 乳がんと診断された時点でその癌の進行と広がり具合がどの程度で転移は見られるのかということが非常に重要になってきます。
通常乳房の切除と同時に脇の下の脂肪組織も切除しますが、これを腋窩リンパ節廓清(えきかリンパ節かくせい)といいます。 これは癌の転移を防ぐため、癌自体とその癌が転移しているであろうことを考慮し脇の下のリンパ節も切除するものですが、 切除するかどうかはその癌の広がり具合や癌の進行具合によって決定します。
この乳房単純切除術ではこの脇の下のリンパ節の切除は行わないということになります。
④胸筋温存乳房切除術
この手術には2つあり、ひとつはオーチンクロス手術、もうひとつはペイティー手術です。
・オーチンクロス手術・・・大胸筋、小胸筋共に残し、リンパ節郭清は行う手術です。
・ペイティー手術・・・大胸筋だけを残し、リンパ節郭清は行う手術です。
⑤ハルステッド手術
最初に述べた手術法で、乳房、筋肉、腋窩(えきか)リンパ節(脇の下のリンパ節)全てを切除します。
以上5つが外科手術ですが、リンパ節の郭清を行うかどうかは非常に重要になってきます。
リンパ節郭清を行った後遺症として手術した後に腕のむくみ、腕の感覚障害、腕の痛みなどを訴えることがあります。
このような後遺症に悩まされることがないようにリンパ節の郭清を行うかどうかは重要です。
そこで不要な郭清を減らし患者さんが後遺症で苦しまないためにセンチネルリンパ節生検が登場しました。
リンパ液の流れにのって癌は転移するわけですから、癌近くの細胞を追っていけば流れに乗っている癌を発見できるわけです。
先ほどの放射性医薬品(ラジオアイソトープ)と青色の色素はいわばその流れを見つけるための案内役というわけです。 そして追跡していった場所を切開して青くなっている組織を採取し顕微鏡で検査します。
転移が見つからなければ脇の下のリンパ節切除は不要ということになり、そのまま傷口を縫合して検査終了です。
この新しい生検方法により不要な郭清が減らせるようになったとはいえ、この検査にも欠点があります。
それはセンチネルリンパ節が発見できなかった場合です。
このような場合は通常転移を避けるためリンパ節郭清を行うことになります。 更にこの生検も100%正しいといえないことです。
この生検により陰性つまり転移の可能性がないと診断されたにも関わらずその後その判断がくつがえされる結果となる場合があります。
その場合やっぱり郭清しなければならないというこになったりするわけですが、 この検査については現在臨床試験が行われておりその結果待ちの状態です。
局所療法ですので全身に対して行わないため副作用がなく患者の負担は少ないといえます。 乳がんは特にこの放射線療法が比較的有効とされる癌です。
癌の増殖・死滅という治療観点以外の放射線療法として乳房温存療法の際にはこの放射線療法がセットで用いられます。 再建手術を行った後再発を防ぐ目的で行われます。
また病気の進行進んでおり、手術をしても仕方がにというような進行性の乳がんや遠隔転移した乳がんに対しても放射線療法は有効とされています。
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そして薬物療法が行われる場合も3つのケースで行います。 そのケースは①手術前化学療法②手術後療法③手術ができない場合の乳がん治療です。
まずはそれぞれの治療法の内容と特徴です。
化学療法
抗がん剤治療のことです。癌細胞に直接働き癌を死滅させる効果があります。
抗がん剤の種類も何種類もあり一回に複数の抗がん剤を投与することもあります。 注射で投与するタイプと内服するタイプがあります。
全身療法のため正常である細胞にも作用してしまうため抗がん剤治療は副作用が患者に大きな負担となってしまうこともありますので事前に医師と相談し、 副作用の内容・投与法を理解することが必要でしょう。
ホルモン療法
乳がんは女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の働きにより活発に動きまわることがわかっています。
つまり女性ホルモンなくしては乳がんは元気に動きまわれないというわけです。 (全ての乳がんがそうなわけではありませんが、約7割がそうであると結果があるそうです)
そこでこの女性ホルモンの供給をなんとか阻害して癌の活発な動きを止めようというのがホルモン療法です。
そのためには乳がんが女性ホルモンの影響を受けているのかどうかを知る必要があります。 もし女性ホルモンの影響を受けやすい癌だということがわかればホルモン療法の効果を期待できるということになります。
このように女性ホルモンの影響を受けやすい乳がんのことをホルモン感受性乳がん又はホルモン依存性乳がんと呼びます。
ホルモン剤としては抗エストロゲン剤(タキモシフェン)やアロマターゼ阻害剤などがよく知られています。 ホルモン療法は化学療法に比べ副作用が少ないが特徴です。
分子標的療法(ハーセプチン)
比較的新しい画期的な治療法です。全乳がんのうち20%~30%程の乳がん細胞は癌の表面にHER2というたんぱく質を持っています。
このたんぱく質は乳がんの増殖に関係しており癌の活性化に大きく関与しています。 この治療法はそのたんぱく質に直接働きかけ、そのたんぱく質を分子レベルで狙い撃ちししようという試みです。
癌を死滅させるというよりも癌の再発・進行を遅くさせる効果を期待できます。 しかし、HER2を持っている乳がんのみにしか効果を期待できません。
以上が薬物療法の内容と特徴です。 次にその投与ケースです。
①ケースその1…術前化学療法
乳房温存療法が難しい(癌の大きさが5㎝以下であれば乳房温存療法が可能であると言われているが絶対ではなく、 5㎝以下であってもできない場合があればその逆もある)と思われる癌に対して抗がん剤を使用し温存療法が可能な大きさになるまで癌を小さくするという治療です。
もちろん抗がん剤を使用したからといって全ての癌が小さくなるわけではないが効果があれば温存療法を可能にする。
②ケースその2…術後療法
術後微小転移(初期段階の転移のこと)を防ぐために行う化学治療法のことです。
癌の微小転移を完全に把握して予測することは不可能です。 数年後転移しないかもしれませんし、転移するかもしれません。 再発・転移を防ぐこのことは非常に重要になってきます。 乳がんは再発・転移をした場合治療は困難になってきてしまうからです。 乳がんが全身病だと言われる所以もそのためです。
③ケースその3…手術ができない場合の乳がん治療
これは進行性の乳がんに対して手術ができない、手術をしてもあまり変わらないなどの場合に状況に応じて行います。

・乳房再建手術






